2025年のハイライトと2026年への展望 ― IP・カルチャー・テクノロジー
目次
1. はじめに|新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。
日頃より、作品や活動をご覧いただいている皆さま、また、プロジェクトや対話を通じて関わってくださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。
2025年の活動を振り返りながら、aratama 璞 として何を考え、何を実装してきたのか、そして2026年にどのような未来を描いているのかを、あらためて言葉として整理していきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2. aratama 璞の軸となる思想
これまで私は、生成AIを表現として用いながら、作品制作、IPの構築、メディアやプラットフォームの運営に取り組んできました。
その中で一貫して重視してきたのは、テクノロジーそのものではなく、そこから生まれる人との関係性や、場に立ち上がるカルチャーです。
AIによって情報と表現が爆発的に増えた一方で、いま強く感じているのは、表現の「濃度」や「責任」が急速に希薄化しているという現実です。
誰もが短時間で完成度の高いアウトプットを生み出せる時代になり、文脈や思想を十分に伴わない表現が、判断されないまま流通する状況が生まれています。
その結果、本来表現の中にあったはずの問いや感情、違和感といった部分が、見えにくくなっていると感じています。
表現とは本来、時間をかけて考え、迷い、判断を重ねる中で、作り手の態度や責任が積み上がっていくものです。
しかし現在は、出力のスピードがあまりにも速く、「なぜそれを出すのか」という判断が追いつかないまま、量だけが増えていく状態に陥りやすくなっています。
「AIが作ったから」という言葉が、判断や説明を先送りするための言い訳として機能する段階は、すでに終わりつつあります。
これからは、AIを使ったかどうかではなく、その表現を選び、社会に差し出した主体は誰なのかという責任が、より明確に問われていくはずです。
だからこそ私は、IPを単なるキャラクターやコンテンツではなく、思想や問い、そして判断の責任を内包した存在として捉えています。
IPがあることで、表現は断片的な出力ではなく、世界観と文脈の連続性の中に位置づけられ、時間をかけて積み上げられていくものになります。
カルチャーは、人と人、人とテクノロジーをつなぐ媒介です。
技術だけでは判断できない価値や違和感を、文化や生活の文脈を通して共有することで、表現ははじめて社会の中に根づいていきます。
IP、カルチャー、テクノロジー。
この三つを往復させながら、人とAIが互いに拡張し合う表現と関係性の深度を掘り下げていくこと。
共感する人々が集い、対話や試行錯誤が生まれる場を育てながら、まだ誰も踏み入れていない領域へと向かっていくこと。
それが、私がこの軸で活動している理由です。
独立した思想と美意識を持つIPが集い、カルチャーを媒介に、人とテクノロジーの関係性を提示する。
この言葉は、作品制作やプロジェクトを進めるうえでの世界観の宣言であると同時に、判断の基準となる思想です。
ここで、「IP」「カルチャー」「テクノロジー」それぞれの意味を整理しておきます。
IPとは何か ― 思想と時間、実績を内包する存在
IP(知的財産)とは、単なるキャラクターや権利の集合ではありません。
私にとってIPとは、先人たちがそこにかけてきた思考や感情、費やされた時間、積み重ねられてきた実績までも含めて継承される存在です。
試行錯誤や失敗、挑戦の痕跡が文脈として引き継がれていくからこそ、IPは一過性の表現ではなく、時間を超えて生き続けます。
IPを、完成した成果物ではなく、思想と美意識が蓄積され、更新され続ける「生きた構造」として捉えています。
カルチャーとは何か ― 呼吸する場としての生命体
カルチャーは、ルールや言葉だけで定義できるものではありません。
価値観や感情、空気感が重なり合った「塊」として、人の行動や選択を静かに導く力を持っています。
私はカルチャーを、まるでその場自体が生きて呼吸しているかのような生命体として捉えています。
理由は説明できなくても「惹かれる」「落ち着く」「興奮する」「違和感を覚える」。
その感覚こそが、カルチャーの正体だと感じています。
この生命感が育つことで、場は単なる機能やサービスを超え、人が自発的に関わり、共感し、行動するブランドへと変化していきます。
私にとってカルチャーとは、IPと人を自然につなぎ、関係性を持続させるための土壌です。
テクノロジーとの向き合い方 ― AIが人を拡張する時代の設計思想
テクノロジー、とりわけAIの進化は、インターネット時代と比べてもはるかに大きな加速度を持っています。
シンギュラリティやAGIが、現実的な距離に近づいている段階にあると感じています。
AIがAIを生み出すような時代において重要になるのは、「何を作るか」ではなく、どのように設計し、制御し、どの思想や倫理を組み込むかです。
それは技術的判断を超えて、人間性をどのように構築していくかという中核的な問いにつながります。
そのため、AIを使う側には、常にリテラシーをアップデートし続ける姿勢が求められます。
ただしそれは、制限や恐れのためではありません。
AIは人をサポートし、思考や表現、判断の幅を大きく拡張してくれる存在でもあります。
人が引き受けるべき責任と判断の領域を意識的に設計することで、AIは人間性を奪うものではなく、創造性や想像力を押し広げるパートナーになり得ます。
その可能性に、私は大きな希望と楽しさを感じています。
三つを往復させるという思想
IP、カルチャー、テクノロジーは、それぞれが独立しながらも、固定された役割を持つものではありません。
状況に応じて重なり合い、影響し合い、関係性そのものを更新していく存在です。
この三つを往復させながら、人とAIが互いに拡張し合える表現と関係性の深度を掘り下げ、共感する人々が集い、試行錯誤が生まれる場を育てていく。
この思想が、作品制作、IP Universeの構築、AIクリエイターズをはじめとするすべての活動の基盤となっています。
3. 2025年に実現したこと|IP Universeの具体的な実装
2025年は、これまで構想として描いてきたIP Universeを、実験や挑戦を通じて現実の形として実装していった一年でした。
ここでは、aratama 璞としての表現活動、そしてプラットフォームや場づくりを通じた取り組みを振り返ります。
3-1. AIアーティストとしての作品・表現としてのIP
AIアーティストとしての活動においては、IPを単体のキャラクターやビジュアルではなく、思想や世界観を内包した存在として立ち上げることを意識してきました。
- YōuMo 妖萌
- AratamaKōgyō 璞工業
- tamarqü Virtual Human
2025年には、IP Universeとして以下のIPをリリースしました。
それぞれが異なる美意識や問いを持ちながら、同一の世界観の中で共存できる構造を目指しています。
aratama IPs:https://aratama.io/ip/
また、国際的なAIコンテストや映画祭、展示への参加を通じて、AI表現をより広い文脈へと接続してきました。
参加者やゲストとの交流を深めることで、現在地を確認し、仲間を増やすこともできました。
- Runway社主催「Gen:48 – Fourth Edition」への応募作品
- AIミュージックビデオ作品『Inner Elevator』が 5ives.ai にて No.1 に選出
- Escape.ai への AIクリエイター参加
- 世界のAIアニメ映画祭「genAIme [ esc ] fest 2025」 への作品出展
- 日本コロムビアが主催するAIクリエイティブコンテスト「COLOTEK(コロテック)」本戦出場
- 「生成AIなんでも展示会 Vol.4」への出展
さらに、映像表現に加えて、絵本というフォーマットにも挑戦しました。
オリジナル絵本『ぱぱぱ』(TamagoDaruma にてリリース、書籍化予定)
AI表現を用いながらも、子どもや家族と共有できる体験として成立させることで、IPが世代や文脈を越えて機能する可能性を探っています。
3-2. AIクリエイターズ|媒介としてのIPプラットフォーム構築
AIクリエイターズを通じたプラットフォーム構築にも注力してきました。
2025年3月には、生成AIとクリエイティブの最前線を発信するAIクリエイターズ・メディア(日英) をリリースし、運用を開始しました。
この取り組みは、単なる情報発信にとどまらず、AIクリエイターと企業、プロジェクトをつなぐ媒介としての役割を担っています。
- AIクリエイティブ領域におけるクライアントワーク
- 生成AIワークフローの検証・設計・独自開発
- プロデューサーとしての関与
- AIクリエイターのアサイン
- チーム編成・共同制作の設計
個人の表現とチームでの制作、実験と実務を往復する中で、AI時代における新しい制作体制や役割分担のあり方を実践的に模索してきました。
まだまだ経験値が足りず、多方面にご迷惑をおかけしている状況ですが、地道に積み上げていこうと思います。
3-3. 別分野におけるIPプラットフォームの構築
- 工芸作家と企業・世界をつなぐ日本の伝統工芸共創プラットフォーム
- アートフェアや芸術祭をより深く楽しむための体験設計
- 生まれてからすべての成長段階を見つめるライフステージメディア
IP Universeの考え方は、AIクリエイティブ事業の領域に限ったものではありません。
2025年は、別分野においてもAIを活用しながら、複数のプラットフォームを立ち上げ、運用してきました。
まず、2025年6月には、工芸作家と企業、そして世界をつなぐ日本の伝統工芸共創プラットフォーム「Kogei Japonica」を立ち上げました。
メディア(日英)を軸に、伝統工芸の文脈と現代の技術・ビジネスを接続する試みを行っています。
また、アートフェアや芸術祭をより深く楽しむための体験設計として、japan ART EX アプリ(日英)アートフェア/芸術祭向けアプリの開発・運用にも取り組みました。
鑑賞体験を拡張し、来場者が主体的にアートと関われる仕組みづくりを通して、テクノロジーがカルチャーを支える形を模索しています。
さらに、生まれてからすべての成長段階を見つめるライフステージメディア「たまごだるま(TamagoDaruma)」の通年運用も継続しています。
AIを活用した人の感情や生活のリズムに寄り添うメディアとして、IPが長い時間軸で機能する可能性を探っています。
4. 反省と未完の問い
2025年は、多くの実践と挑戦を積み重ねることができた一年でした。
一方で、手応えと同時に、まだ十分に向き合いきれていない問いや、構造的な改善が必要な点も、見えてきました。
AIクリエイターへの支援のあり方
AIクリエイターズという場を通じて、多様な才能や視点に触れる機会は確実に増えました。
参加いただく方やクライアントも増えておりますが、一人ひとりのクリエイターが継続的に成長し、安心して試行錯誤できる環境は構築できていません。
また、スクール事業についても、現時点では教材開発にとどまり、学びが実践や関係性へと循環していく設計までには至っていません。
技術や仕事の機会を提供するだけではなく、悩みや視点を共有し合えるコミュニケーションの土壌まで含めた支援の形を、より丁寧に設計する必要があると感じています。
アートや芸術領域との向き合い方
テクノロジーと表現をつなぐ試みは進めてきましたが、既存のアート文脈や歴史、作家が積み上げてきた時間との対話は、できておりません。
新しさを提示することと、過去から続く文脈への敬意を持って接続すること。
その両立は簡単ではありませんが、ここから先、より深く向き合うべき重要なテーマだと捉えています。
スピードと深度のバランス
AIによって実装や検証のスピードは格段に上がりました。
その一方で、立ち止まって考える時間や、表現の意味を掘り下げる余白が不足していた場面も否定できません。
また求められているクオリティもますます高くなっています。
結果として、選択と集中が十分にできていなかったと思います。
速さそのものが価値になりやすい時代だからこそ、どこで加速し、どこで減速するのか。
その判断力を、より意識的に磨いていく必要があると感じています。
未着手のまま残したミッション
動画メディアへの本格的な取り組みや、IP Universeそのものの解像度と成長については、着手できていません。
IPを立ち上げ、世界観を提示することはできましたが、それらがどのように人の中で育ち、関係性として広がっていくのか。
そのプロセスを丁寧に設計し、観察していく段階には、まだ至っていないと感じています。
これらの反省や問いは、立ち止まるためのものではなく、次に進むために必要なステップです。
すぐに答えが出るものではありませんが、課題を抱えたまま試行錯誤を続けること自体が、IP Universeを成長させていくために欠かせないプロセスだと考えています。
この未完の状態を、2026年にどこまで前に進めることができるのか。
それが、次のミッションです。
5. 2025年の先に見えたもの、そして2026年へ
AIが「当たり前」になった世界で、何が問われ始めているのか
2025年を通して強く感じたのは、AIが特別な存在ではなくなり、多くの人にとって「意識せずに使われる技術」へと移行し始めたという変化です。
生成や補完、最適化といった機能は日常に溶け込み、技術そのものが話題の中心になる場面は、確実に減ってきました。
その一方で、なぜそれをつくるのか、どの判断を人が引き受けるのかといった問いは、かえって曖昧になりやすくなっていると感じています。
便利さや速度が前提になった今だからこそ、表現やIP、場の設計において「思想」や「態度」がより強く問われるフェーズに入った、そのような感覚を持っています。
IPは「成果」ではなく、関係性として育っていくもの
2025年は、IP Universeという枠組みを提示し、複数のIPやプロジェクトを立ち上げることができた一年でした。
しかし振り返ってみると、IPは発表した瞬間に完成するものではなく、人との関係性の中で時間をかけて育っていく存在なのだと、改めて実感しています。
どのIPが、誰に、どのように受け取られ、どの場で対話や試行錯誤を生み出していくのか。
数を増やすことよりも、それぞれのIPが持つ問いや世界観が、人の中でどう根を張っていくのかを見つめる視点が、これからはより重要になると感じています。
AIクリエイターズを「場」から「生態系」へ
AIクリエイターズは、AIとクリエイティブの接点を可視化するための「場」としてスタートしました。
2026年に向けては、この場を単なる情報発信やマッチングの拠点に留めるのではなく、試行錯誤や対話、失敗までもが循環していく生態系へと育てていきたいと考えています。
個人の表現、クライアントワーク、研究、教育、遊び。
それぞれが分断されるのではなく、緩やかにつながり合い、クリエイター自身が成長のプロセスを実感できる状態を目指します。
ローカルと世界を往復しながら、カルチャーを育てる
2025年は、国内外のコンテストや展示、日本の伝統工芸やアートフェアとの関わりを通じて、ローカルとグローバルを往復する機会が増えた一年でもありました。
日本・東京という文脈を起点に世界と接続し、そこで得た視点や刺激を、再びローカルへと持ち帰る。
この往復運動の中でこそ、カルチャーは一過性の流行ではなく、「場の空気」や「関係性」として定着していくのだと感じています。
変化の速さを前提としながらも、インタラクティブで、継続的に育っていくカルチャーのあり方を、これからも探り続けていきたいです。
2026年は、IP Universeを「育てる」年へ
2026年は、新しいIPを次々と生み出す年というよりも、すでに生まれたIPや場を、時間をかけて育てていく年にしたいと考えています。
人とAIが互いに拡張し合う表現の深度を掘り下げ、共感する人々が自然と集まり、対話や実験が続いていく状態をつくること。
そして、新しい技術や未知の領域にも臆せず向き合いながら、まだ誰も足を踏み入れていない場所へ、一歩ずつ進んでいくこと。
それが、2026年のテーマです。
共につくり、共に問い続けるために
IP Universeは、一人で完結する世界ではありません。
クリエイター、企業、研究者、アーティスト、そしてあらゆるステークホルダーとの関係性の中で、問いを共有し、試行錯誤を重ねながら、少しずつ形を変えて育っていくものだと考えています。
2026年もまた、答えを急がず、問いを抱えたまま歩み続けながら、一緒にこの世界を育てていけたら幸いです。
AIクリエイターズへのご参加やお問い合わせも、ぜひお気軽にお寄せください。




